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第110回看護師国家試験

午前問題
次の文を読み91~93の問いに答えよ。
 Aさん(43歳、女性)は夫と2人暮らし。身長150cm、体重98kg。既往歴はない。先日、庭で転倒し右腓骨を骨折し、膝関節から足関節までのギプス固定をしている。来週、プレート固定術を受けることになっており、本日は夫と一緒に術前オリエンテーションに来院した。来院時のAさんのバイタルサインは、体温36.8℃、呼吸数16/分、脈拍80/分、血圧138/80mmHgであった。夫によると「妻は、寝ているときはいつも大きないびきと、時々無呼吸があるので、慌てて起こしている」と言う。
問 91
手術までの自宅でのAさんの過ごし方で、優先して指導すべき内容はどれか。
  1. 食事制限
  2. 足趾の運動
  3. ベッド上安静
  4. 体位変換の方法
2
問 92
Aさんは入院し、手術を受けた。手術室から病室への帰室後1時間、Aさんのバイタルサインは、体温35.9℃、呼吸数16/分、いびき様呼吸、脈拍60/分、血圧145/87mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉96%(鼻腔カニューレ3L/分酸素投与下)。大きな声で呼ぶと開眼し、簡単な指示に従うことができる。尿量は70mL/時、血糖値128mg/dLであった。
看護師が優先して対処すべきAさんの症状・徴候はどれか。
  1. 体温35.9℃
  2. いびき様呼吸
  3. 血圧145/87mmHg
  4. 尿量70mL/時
  5. 血糖値128mg/dL
2
問 93
手術後2日。Aさんはバイタルサインも安定しているため、離床の準備を始めることになった。
初回離床時に最も注意すべき訴えはどれか。
  1. 「息苦しい」
  2. 「腰が重い」
  3. 「痰が出る」
  4. 「傷口が引きつる」
1
次の文を読み94~96の問いに答えよ。
 Aさん(26歳、男性)は1か月前から動悸と20m程度の歩行でも息切れが出現するようになった。ぶつけた記憶もないのに下肢に出血斑ができるようになり、医療機関を受診した。Aさんは急性白血病を疑われ、緊急入院し、後腸骨稜から骨髄穿刺を受けた。
身体所見:意識清明、体温37.2℃、呼吸数17/分、脈拍124/分、血圧96/52mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉97%(room air)、両下肢に散在する出血斑あり。
検査所見:Hb5.1g/dL、白血球44,960/µL、血小板1.5万/µL、総ビリルビン1.1mg/dL、尿素窒素19.4mg/dL、クレアチニン0.76mg/dL、CRP2.2mg/dL。
胸部エックス線:縦郭・心陰影・肺野に異常なし。
問 94
Aさんの骨髄穿刺の30分後に観察すべき項目で優先度が高いのはどれか。
  1. 経皮的動脈血酸素飽和度
  2. 穿刺部の止血状態
  3. 下肢の運動障害
  4. 眼瞼結膜
2
問 95
Aさんは急性骨髄性白血病と診断された。化学療法によって寛解し、造血幹細胞移植を行う方針となった。
Aさんの造血幹細胞移植で正しいのはどれか。
  1. Aさんと骨髄提供者の性別が一致している必要がある。
  2. 移植後2週間で退院できる。
  3. 移植前処置が必要である。
  4. 手術室で行う。
3
問 96
造血幹細胞移植後、生着が確認された。皮膚にStageⅠの移植片対宿主病を発症したが、免疫抑制薬の内服を継続しつつ退院することになった。
Aさんの退院に向けた看護師の指導で正しいのはどれか。2つ選べ。
  1. 「皮膚の状態がよくなれば免疫抑制薬は中止してください」
  2. 「加熱していない魚介類を食べるのは避けましょう」
  3. 「インフルエンザワクチンの接種は避けてください」
  4. 「直射日光に当たらないようにしましょう」
  5. 「入浴は最小限にしてください」
24
次の文を読み97~99の問いに答えよ。
 Aさん(92歳、女性)は、脳梗塞の後遺症のため要介護4で、2年前から特別養護老人ホームに入所している。入所時は、日常生活は全介助で、話しかけるとうなずいたり首を振るなど自分の意思を伝えることができた。Aさんは歌が好きで、歌に関するレクリエーションには車椅子で参加し、笑顔がみられていた。家族は週1回、面会に来ていた。入所時に、Aさんは「延命処置を望まない」、家族は「できるだけ長生きしてほしい」と言っていた。
 最近、ほとんど食事を摂らなくなり、閉眼していることが多く、看護師や施設職員の声かけに対する反応が徐々に鈍くなってきた。家族が面会時に声をかけると、目を開け、うなずくなどの意思表示がある。Aさんの状態から、医師と相談し看護師は看取りの準備が必要であると判断した。
問 97
Aさんの死の迎え方を決めるために優先されるのはどれか。
  1. 主治医の治療方針
  2. 施設の職員のケア方針
  3. 入所時のAさんの意思
  4. 現在のAさんと家族の意思
4
問 98
Aさんは、食事を全く食べず、水分も取らなくなり、皮膚も乾燥してきた。家族は毎日面会にきて声をかけているが、反応がなくなってきた。
Aさんが死に向かう中で、穏やかに過ごすための援助で適切なのはどれか。
  1. 好きな音楽をかける。
  2. 輸液療法を検討する。
  3. 家族の面会を制限する。
  4. 皮膚の清潔ケアを頻回に行う。
1
問 99
3日後、Aさんは声かけに全く反応しなくなったため、看護師は死期が迫っていると判断した。
看護師が観察するAさんの状態はどれか。
  1. 尿量の増加
  2. 流涎の増加
  3. 下痢便の出現
  4. 下顎呼吸の出現
4
次の文を読み100~102の問いに答えよ。
 Aさん(77歳、男性)は、妻(79歳)と2人暮らし。5年前にAlzheimer〈アルツハイマー〉型認知症と診断された。現在のMMSE〈Mini-mental State Examination〉は18点。家では、食事は準備すれば自分で摂取できる。排泄は尿意や便意ともにあり、トイレで排泄できる。入浴は妻の介助でシャワー浴を行っているが、機嫌が悪いと「うるさい」と怒鳴り、介助を拒否する。Aさんはにぎやかな場所が苦手であり、また、時々1人で外に出て行ってしまい家に帰れなくなることがある。
 最近、Aさんが妻の介助を激しく拒否し大声で怒鳴ることが多くなってきたため、妻は介護支援専門員に相談した。相談の結果、妻の介護負担を軽減する目的で、Aさんは通所介護を利用することになった。
問 100
通所の初日、Aさんは、初めての場所に戸惑った様子で、施設内を歩き回っている様子がみられた。妻は「夫がデイサービスに慣れるか心配です」と言って、Aさんの様子をみている。
妻への看護師の声かけで最も適切なのはどれか。
  1. 「Aさんが好きなことをして過ごせるようにします」
  2. 「入口のドアに鍵をかけてあるので大丈夫です」
  3. 「毎回、Aさんに付き添ってください」
  4. 「Aさんには1人で居てもらいます」
1
問 101
通所介護でレクリエーションが始まり、Aさんは周囲を見ていたが、しばらくするとそわそわしながら席を離れていなくなった。その後、看護師は、介護職員からAさんがゴミ箱に排尿していたという報告を受けた。
このときのAさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。
  1. 目立たない場所にゴミ箱を置く。
  2. 1時間ごとに尿意を確認する。
  3. パンツ型おむつを勧める。
  4. トイレの際は同行する。
4
問 102
入浴の時間になり、Aさんは浴槽を見て「あれは、何?」と興味を示したが、介護職員が入浴を勧めると「今日はやめておく」と言う。看護師が再度入浴を勧めると、Aさんは「今日は忙しくて時間がない」と答えている。
Aさんへの看護師の対応で最も適切なのはどれか。
  1. 全身清拭を行う。
  2. 浴槽の説明を行う。
  3. 自宅で入浴してもらう。
  4. 時間をおいてから再度入浴を勧める。
4
次の文を読み103~105の問いに答えよ。
 A君(7歳、男児)は、サッカークラブに所属している。本日、練習中に転倒して右腕を地面についた後、肘周囲に腫れと強い痛みが生じたため、父親と救急外来を受診した。エックス線撮影の結果、右側の上腕骨顆上骨折と診断され、非観血的整復とギプス固定が行われることになった。A君は不安な表情で父親と処置室の前で待っている。
問 103
ギプス固定にあたり、A君への看護師の説明で適切なのはどれか。
  1. 痛くないことを説明する。
  2. すぐ終わることを説明する。
  3. ギプスが乾くときに冷たくなると説明する。
  4. ギプスに使うものを見せながら説明する。
4
問 104
A君は、整復術後の経過観察のため1泊入院することになった。
整復術後の合併症の観察方法で適切なのはどれか。
  1. 患側の肩の皮膚色を観察する。
  2. 患肢の観察は8時間ごとに行う。
  3. 感覚鈍麻の有無は患肢の手指を触れて観察する。
  4. 冷感はギプスの中に看護師が手を入れて観察する。
3
問 105
退院時、A君は「明日から学校に行けるかな」と看護師に質問した。看護師は、学校には行けることを伝えた後、学校生活における注意点を説明することにした。
A君への説明で適切なのはどれか。
  1. 「右手の指は使わないでね」
  2. 「ギプスは濡れても大丈夫だよ」
  3. 「ギプスをぶつけないようにしてね」
  4. 「体育の授業は休まなくてもいいよ」
3
次の文を読み106~108の問いに答えよ。
 Aさん(30歳、初妊婦)は、夫(32歳、会社員)と2人暮らし。身長は160cm、非妊時体重60kgである。妊娠8週の妊婦健康診査を受診し順調な経過と診断された。嘔吐はないが、時々嘔気があると訴え、対処法について質問があった。
問 106
Aさんへの説明で適切なのはどれか。
  1. 「空腹を避けましょう」
  2. 「塩味を濃くしましょう」
  3. 「規則正しく3食摂りましょう」
  4. 「市販の調理済みの食品は控えましょう」
1
問 107
妊娠12週の妊婦健康診査の際、「つわりが少し楽になってきて、ついつい食べてしまいます。あまり太らない方がよいですよね」と話す。
Aさんの妊娠期間中の理想体重増加量の範囲について、下限と上限の組合せで正しいのはどれか。
1.
7kg
10kg
2.
7kg
12kg
3.
9kg
10kg
4.
9kg
12kg
2
問 108
Aさんは、妊娠34週4日の妊婦健康診査を受けた。Aさんの母は祖母の介護をしており、産後の支援を期待できない。妊婦健康診査後、「産後は夫と2人で子育てをしていきます。子育てのために何か利用できる制度はありますか」と相談があった。
産後、Aさんの夫が適用となる制度はどれか。
  1. 育児休業
  2. 育児時間
  3. 休日労働の制限
  4. 勤務時間の変更
1
次の文を読み109~111の問いに答えよ。
 Aさん(29歳、初産婦)は、妊娠37週0日で2,780gの男児を正常分娩で出産した。出生後5分の児の状態は、心拍数150/分、四肢を屈曲させて啼泣している。顔面を清拭されると激しく泣し、全身はピンク色である。
問 109
このときの児のApgar〈アプガー〉スコアは何点か。
  1. 10点
  2. 8点
  3. 6点
  4. 4点
1
問 110
出生後1時間。児の状態は、直腸温37.0℃、呼吸数40/分、心拍数120/分、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉96%(room air)、四肢冷感やチアノーゼを認めない。哺乳は開始していない。Aさんの経過は順調である。
このときの児への看護で適切なのはどれか。
  1. ビタミンK2シロップを経口投与する。
  2. 風通しの良いところに児を寝かせる。
  3. 先天性代謝異常検査を行う。
  4. 早期母子接触を行う。
4
問 111
産褥4日。Aさんは、血圧112/80mmHg、脈拍76/分、Hb11.2g/dL、Ht37.0%。子宮底を臍下4横指に硬く触れる。悪露は赤褐色で少量。凝血の混入や悪臭はない。乳房は緊満しており移行乳が分泌している。Aさんは「夜中も3時間ごとくらいに授乳をするためほとんど眠れていません」と話している。表情は穏やかである。
Aさんのアセスメントとして適切なのはどれか。
  1. 貧血である。
  2. 産後うつ病である。
  3. 子宮復古は順調である。
  4. 乳汁分泌が遅れている。
3
次の文を読み112~114の問いに答えよ。
 Aさん(19歳、男性)は、幼い頃から忘れ物や遅刻が多く、落ち着いて授業を受けることが難しかった。学校からは精神科の受診を勧められていたが、受診することなく高校まで卒業した。卒業後は事務職として働きはじめたが、仕事上のトラブルで上司や同僚から叱責を受けたことをきっかけに、仕事を無断で休むことが多くなった。産業医から精神科外来を紹介され、両親とともに受診した。本人の診察と両親からの生育歴の聴取が行われ、注意欠如・多動性障害〈ADHD〉と診断された。
問 112
職場でAさんにみられる可能性が高い行動はどれか。
  1. 仕事中に突然意識を失って倒れる。
  2. 退勤時に戸締りの確認を繰り返す。
  3. 集中して仕事をすることができない。
  4. 状況にふさわしくない単語の発声を繰り返す。
3
問 113
診察後、Aさんの両親は「親としてどうしたら良かったのでしょうか、私たちの育て方に問題があったのでしょうか」と外来看護師に話した。
このときのAさんの両親への対応として適切なのはどれか。
  1. 「Aさんは育てにくいお子さんでしたね」
  2. 「職場の環境が悪かったことが原因です」
  3. 「ご両親の育て方が原因ではないと思いますよ」
  4. 「もっと早くAさんの問題に気が付けばよかったですね」
3
問 114
Aさんは予約した受診日を忘れてしまい、受診できないことが度々あった。Aさんは、これまで忘れないための工夫を何もしてこなかったと外来看護師に話した。
Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。
  1. 「ご家族に予定を管理してもらいましょう」
  2. 「忘れてしまった理由を考えてみましょう」
  3. 「予定を忘れたことで生じる不利益を整理してみましょう」
  4. 「今予約した次回の受診日をこの場で予定表に書き込みましょう」
4
次の文を読み115~117の問いに答えよ。
 Aさん(78歳、男性)は、妻(70歳)と2人暮らしである。脳血管障害後遺症による右片麻痺があり、車椅子への移乗は部分介助、要介護2である。排泄はポータブルトイレを利用している。Aさんと妻はなるべく家で過ごしたいと考え、自宅での介護はすべて妻が行っている。長女(会社員)が県内に在住しているがAさんの介護はしていない。訪問看護を週1回利用するのみで、他のサービスは利用していない。最近、妻の腰痛が悪化し、妻から訪問看護師に「主治医から介護の負担を軽減するように言われました。でも夫は家から出たくないし、私も夫をどこかに預けるのは不安です。どうしたらよいでしょうか」と相談があった。
問 115
このときの訪問看護師が提案するAさんへのサービスで最も適切なのはどれか。
  1. 通所介護
  2. 訪問介護
  3. 短期入所生活介護
  4. 訪問リハビリテーション
2
問 116
サービス導入後1か月。今朝、妻から訪問看護師に「夫の身体が震えています。よだれを垂らして、目が合わないです」と連絡があった。訪問看護師が訪問すると、Aさんの震えは止まっており、Aさん自身は「何が起きていたのか覚えていない」と言う。訪問時の体温36.0℃、呼吸数18/分、脈拍82/分、血圧130/62mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉95%(room air)であった。妻によると、2日間排便がなく、尿量1,500mL/日、尿の性状は黄色透明とのことだった。
妻からの連絡時にAさんに起きていたと考えられる状態はどれか。
  1. 感染
  2. 脱水
  3. 便秘
  4. けいれん
4
問 117
Aさんは入院したが、状態が安定し入院後3日で退院することが決まった。長女が「父が退院したら、母の腰痛が心配なので、私が父のポータブルトイレへの移動を手伝いたいと思います。介助の方法を教えてください」と訪問看護師に相談があった。
訪問看護師が長女に指導するベッドからポータブルトイレへの移乗の介助方法で正しいのはどれか。
  1. ポータブルトイレをAさんの麻痺側に設置する。
  2. ベッドから立ち上がる際はAさんに前傾姿勢になってもらう。
  3. Aさんの健側に立って介助する。
  4. Aさんの向きを変えるときはズボンのウエスト部分を持つ。
2
次の文を読み118~120の問いに答えよ。
 A市に住むBさん(40歳、経産婦)は、妊娠20週0日である。夫(42歳、会社員)、長女のCちゃん(5歳)の3人暮らし。朝食を終えた午前8時、大規模災害が発生し、夫は倒壊した家屋に両下肢が挟まれ身動きがとれなくなった。一緒にいたBさんとCちゃんは無事だったが、慌てるBさんのそばでCちゃんは泣きながら座りこんでいた。午前10時、夫は救助隊に救出されたが、下肢の感覚はなくなっていた。病院に搬送された夫は、その日のうちに入院となった。
問 118
搬送直後の夫の血液検査データで、高値が予想されるのはどれか。2つ選べ。
  1. カリウム
  2. カルシウム
  3. ヘモグロビン〈Hb〉
  4. 総コレステロール
  5. クレアチンキナーゼ〈CK〉
15
問 119
被災当日にBさんはCちゃんとともに避難所に入所した。被災後1日、Bさんは巡回してきた看護師に「今妊娠20週目ですが、おなかが張ることがあります」と話した。
看護師が確認する項目で優先度が高いのはどれか。
  1. 下肢の浮腫の程度
  2. 食事の摂取状況
  3. 性器出血の有無
  4. 排泄状況
3
問 120
Bさんに異常は認められなかったが、Cちゃんも不安な表情でBさんの傍にいる姿をみて、看護師はBさんとCちゃんは福祉避難所への移動が必要ではないかと考えた。
福祉避難所への移動のために看護師が連携する者で適切なのはどれか。
  1. 精神科医
  2. 民生委員
  3. A市の保健師
  4. ボランティアの保育士
3