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第91回保健師国家試験

午後問題
次の文を読み〔問題1〕、〔問題2〕、〔問題3〕に答えよ。
 Aさん、75歳の男性。10年前に妻を亡くし1人暮らし。隣町に住む息子から市保健センターの保健師に「父は2年ほど前から人が変わったように他人を受け付けなくなった。私が訪ねて行っても『来るな』と追い返された。先日、隣に住む人から『玄関に生ゴミを度々置いていくので注意したら怒鳴られた。近所で万引きをしているという噂も耳にしている。痴呆ではないかと心配している』と連絡があったがどうしてよいかわからず困っている」と電話があった。相談の結果、1週後に息子が来所して面接することになった。
問 1
面接時に息子と話し合う内容で優先度が高いのはどれか。
  1. 入院治療か否かの選択
  2. 父親と保健師との出会い方
  3. 近隣への対応方法
  4. 医療費の助成
2
問 2
翌日息子と保健師は一緒にAさん宅を訪問した。本人は愛想も良く、身なりも整っていたが、家に入るのはかたくなに拒否された。本人の肩越しに室内を見たところ床が見えないぐらい、新聞や食べ物や衣類が散乱していた。
この状況でのAさんへの対応で適切なのはどれか。
  1. 息子と話し合うよう勧める。
  2. この日は引き上げ、後日改めて連絡をする。
  3. 近所の喫茶店に誘う。
  4. 室内の掃除を一緒にすることを提案する。
3
問 3
後日Aさんとの面接を進める中で、専門医への受診が必要だと判断した。
Aさんへの勧め方で適切なのはどれか。
  1. 「息子さんが心配していますよ。」
  2. 「気持ちが楽になりますよ。」
  3. 「介護保険サービスが利用できますよ。」
  4. 「ご近所の方が困っていますよ。」
2
次の文を読み〔問題4〕、〔問題5〕、〔問題6〕に答えよ。
 47歳の女性。1年ぐらい前から転倒しやすく、1か月前に脊髄小脳変性症と診断された。医療費助成を受けるよう勧められ保健所に申請のため来所した。家族は50歳の夫、20歳の長女および18歳の次女の4人暮らしである。
問 4
初回面接時の保健師の対応で適切なのはどれか。
  1. 本人が疾病をどのように受け止めているか聞く。
  2. 調査票を渡して日常生活を詳しく書いてもらう。
  3. 疾病の予後に関する説明をする。
  4. 外出を控えるよう勧める。
1
問 5
その後、本人から保健師に連絡があった。「本で病気のことを調べたが、遺伝性の場合もあることを知った。娘が2人おり、これから結婚ということもある。どうしたらよいか」と訴えた。
対応で適切なのはどれか。
  1. 疾患についての資料をコピーして渡す。
  2. 本人が主治医に相談できるか確認する。
  3. 遺伝子検査を受けることを勧める。
  4. 保健師が娘たちと面接することを提案する。
2
問 6
1年後の医療費助成申請時に本人から近況報告があった。室内でも転倒することが多くなり、室内はつたい歩きで、買い物は夫に頼んでいる状況であった。「今回、介護保険の認定を受け、身体障害者手帳も申請したが、サービスは何も使ってない。私の場合、どのように使えるのか」と相談を受けた。
助言で適切なのはどれか。
  1. 「ホームヘルプサービスは介護保険以外は使えません。」
  2. 「介護保険では居宅サービスは利用限度額を超えると使えません。」
  3. 「障害者施策のデイサービスを利用することができます。」
  4. 「介護用ベッドは自費になります。」
3
次の文を読み〔問題7〕、〔問題8〕、〔問題9〕に答えよ。
 人口6万人のA市。市の保健センターに5人の保健師が配属されている。今年改定された市の基本計画の中で「児童虐待への取り組み」が重点施策としてあげられた。これまでA市では児童虐待の相談事例はあったが、虐待による死亡事例報告はなく、児童虐待予防対策として事業家したものはなかった。
問 7
保健センターの保健師が児童虐待予防事業を考えるにあたり優先して行うのはどれか。
  1. 児童相談所が把握している県全体の虐待通報件数の調査
  2. 乳幼児死亡統計の分析
  3. 保健師が担当している困難事例の検討会の実施
  4. 乳幼児健康診査受診者の相談内容の分析
1. a、b2. a、d3. b、c4. c、d
4
問 8
この結果を基に、保健センター内で話し合いを行ったところ、いくつかの取組案があげられたが決定には至らなかった。そこで保健師は住民の意見を取り入れて虐待予防事業を計画する必要があると考えた。
この段階で適切なのはどれか。
  1. 住民へのアンケート調査
  2. 有識者による懇談会の開催
  3. 育児サークルメンバーへのインタビュー
  4. 主任児童委員への虐待事例調査
3
問 9
住民の意見を取り入れた結果、A市においても虐待につながりやすいハイリスク者の早期把握が課題であることが確認された。
保健センターの事業計画で優先度が高いのはどれか。
  1. 24時間緊急通報システムの整備
  2. 乳幼児健康診査の未受診者の状況把握
  3. 管内救急医療機関との連携会議
  4. 母親学級の充実
2
次の文を読み〔問題10〕、〔問題11〕、〔問題12〕に答えよ。
 人口3万人のA町。老年人口割合は17%で県全体に比べて低い。しかし独居高齢者の人口割合は老年人口の30%を占め、県全体の割合より高い。A町ではこの2か月の間に高齢者の孤独死が数件あり、B地区担当の民生委員は「いつ自分の地区で孤独死が起こるか気が気でない」と保健師に話した。
問 10
民生委員から「独居高齢者を訪問している。中には、閉じこもりがちな人もいるが、民生委員の訪問を快く思わない人もいるので、どうしたらよいか困っている」と話があった。
保健師の対応で適切なのはどれか。
  1. 民生委員から独居高齢者のリストを入手する。
  2. 民生委員に高齢者への対応方法を指導する。
  3. 民生委員の心配する高齢者宅に一緒に訪問する。
  4. 民生委員に保健師の把握している高齢者の情報を提供する。
3
問 11
B地区に居住する独居高齢者Cさん。地区内の行きつけの囲碁センターで半日過ごした後、気分が悪くなり帰宅した。囲碁センターの主人はCさんのことが気になり民生委員に連絡を入れた。民生委員がCさん宅を訪問すると、Cさんが部屋で倒れていたため、救急車で搬送し入院させた。
受療の早期対応を可能にしたのはどれか。
  1. A町の独居高齢者の割合が県全体の割合より高かった。
  2. A町で高齢者の孤独死があった。
  3. Cさんが囲碁センターの主人と顔見知りだった。
  4. 囲碁センターの主人が民生委員の存在を知っていた。
1. a、b2. a、d3. b、c4. c、d
4
問 12
この事例をきっかけに、保健師はA町の独居高齢者を支えるネットワークを作りたいと考え、民生委員、町内自治会、老人クラブ及び社会福祉協議会に参加を呼びかけ、会議を開催した。
提示する資料で適切でないのはどれか。
  1. 独居高齢者の個別の健康情報
  2. 関係者と連携した成功例
  3. 町内のボランティア登録状況
  4. 町の社会福祉サービスの利用方法
1
次の文を読み〔問題13〕、〔問題14〕、〔問題15〕に答えよ。
 Aさん、小学2年生の女児。2年生になった5月上旬、月1回開かれる学校集会時、学年代表で学芸会の出し物について前に出て説明した。視線は下に落としたままで、蚊の鳴くような小さな声で話す自信のない態度や、瞬きを繰り返すチック症状がみられ、養護教諭は気になった。後日、担任に教室での様子を聞いたところ「宿題を忘れることも多いし、休み時間に1人で激しく瞬きをしながらションボリしていることも多くて、心配して声をかけてみたが、僕のことを避けているようだ。どうしたらよいだろう」と相談された。
問 13
この時の担任への対応で適切でないのはどれか。
  1. Aさんの友達関係を把握するよう勧める。
  2. Aさんと養護教諭が話し合ってみることを伝える。
  3. 母親に連絡をとり家庭での様子を聞くように促す。
  4. 学校長に報告する必要のあることを説明する。
4
問 14
担任から相談を受けた直後、PTA活動のため来校したAさんの母親が保健室に相談に来た。「私は子どものことだけを考えて一生懸命やっている。家庭教師を付けて勉強も厳しくさせているが、子どもがだんだん言うことを聞かなくなってきた。子どもは私のことを避けているようだ。父親に話しても子どものことは任せていると言われている。1人で悩んでイライラしているが、他に相談できる人がいない。これから子どもにどう接してよいのかわからない」と養護教諭に訴えた。
この時の対応で適切なのはどれか。
  1. 母親にいつでも相談に来てよいと伝える。
  2. 父親の協力を得るように助言する。
  3. Aさんの様子を記録するよう伝える。
  4. Aさんを専門病院へ受診させるよう勧める。
1
問 15
その後1か月経過したが、Aさんの様子は変わらなかった。
この時点での養護教諭のAさんへの対応で適切なのはどれか。
  1. 休み時間に教室へ出向いて声かけをする。
  2. 保健室の手伝いをしてくれるように頼む。
  3. 母親のことをどう思っているか聞く。
  4. 特別な関わりはしないで見守る。
2
次の文を読み〔問題16〕、〔問題17〕、〔問題18〕に答えよ。
 Aさん、48歳の男性。従業員数800人のコンピュータシステム開発会社に勤務している。2か月前に課長に昇任した。健康管理室に来室し「この2週くらい食欲がなく眠れない。朝早く眼が覚め何もする気がしない。仕事に集中できずミスが多くなった。妻や上司に励まされ、がんばろうと思うががんばれない」と保健師に訴えた。
問 16
Aさんの健康状態をアセスメントするために把握する情報で適切でないのはどれか。
  1. 時間外勤務の状況
  2. ミスの内容
  3. 上司との関係
  4. 職務上の業績評価
4
問 17
専門医を受診した結果、うつ病と診断され、1か月の休職となった。保健師はAさんの依頼を受け、休職中も職場復帰に備え、Aさんの上司と相談や情報交換を行った。
上司に対する保健師の対応で適切なのはどれか。
  1. 仕事内容について検討してもらう。
  2. 出勤後1か月は仕事をはずすよう調整してもらう。
  3. 課の職員に経過を報告し、対応を検討することを勧める。
  4. 居住地の保健所からの家庭訪問を依頼することを勧める。
1
問 18
この後もAさんのような人が2人現れた。保健師はメンタルヘルス対策を行う必要性を感じた。
対策で適切でないのはどれか。
  1. 昼休みに音楽を流す。
  2. 肩こりの自己チェックの推進をする。
  3. 管理職を対象に精神保健研修会を開催する。
  4. 管理職に職員のストレスチェックを義務付ける。
4
次の文を読み〔問題19〕、〔問題20〕、〔問題21〕に答えよ。
 A保健所に転勤してきた保健師は、近所の食堂のメニューがどこもカロリーが高く、塩分が多いことに気付いた。健康相談に来所した人の話からは、この地域の外食利用率が高いことが予測された。
問 19
まず、管内の生活習慣病に関する健康状態を調査することが必要と考えた。
適切な資料はどれか。
  1. 死亡小票の分析による死亡動向
  2. 基本健康診査の循環器検査結果
  3. 国民健康・栄養調査の平均塩分摂取量
  4. 患者調査による高血圧症受療者数
1. a、b2. a、d3. b、c4. c、d
1
問 20
その後、住民に適正な栄養情報を提供し、住民、関係業者および行政が一体となって健康づくりを推進することを目的に「協力店登録事業」を企画することになった。
この事業を推進する上で有用なのはどれか。
  1. 動脈硬化予防教室
  2. 食品衛生講習会
  3. 特定給食施設への栄養管理指導
  4. 食生活改善推進員への研修
1. a、b2. a、d3. b、c4. c、d
正答なし
採点除外等の扱いをした問題
1) 採点上の取り扱い
採点対象から除外する。
2) 理由
問 21
その後管内では、外食の栄養成分表示の推進とヘルシーメニューの提供の増加を目標とした事業が展開されたが、協力店からヘルシーメニューが売れないと相談があった。
対応で優先度が低いのはどれか。
  1. ヘルシーメニュー内容の点検
  2. 協力店登録事業の広報の強化
  3. 住民を対象にした健康づくり事業の強化
  4. 非協力店への働きかけの強化
4
次の文を読み〔問題22〕、〔問題23〕、〔問題24〕に答えよ。
 人口およそ120万人の県。救命救急センターは県東部と県西部との2か所に整備されている。今般、県議会を傍聴中の住民が不整脈の発作を起こし倒れたこともあって、衛生主管部局では心肺停止状態(CPA)に陥った傷病者の救急体制について検討することになった。
 表は、心肺停止状態に陥った傷病者の年次別の救急車による搬送人数と、救急車到着時点で住民等による救命処置が実施されていた人数である。
状況設定問題の画像
問 22
心肺停止状態に陥った傷病者の救命率を上げるための今後の課題で優先度が高いのはどれか。
  1. 救急車到着前の救命処置実施率の向上
  2. ドクターカー(医師の同乗する救急車)の配備
  3. 救急病院、救急診療所の増加
  4. 救命救急センターの新設
1
問 23
衛生主管部局のA保健師は、心肺停止状態に陥った傷病者の救急体制を考えるために、勉強会を開催することにした。
参加者として優先度が低いのはどれか。
  1. 医師会の代表
  2. 看護協会の代表
  3. 県議会事務局の職員
  4. 消防機関の職員
3
問 24
折から保健医療計画の改定時期であったので、心肺停止状態に陥った傷病者の救命率を上げるための対策を計画の中に記載することになった。A保健師は保健所保健師と市町村保健師とからなるプロジェクトチームを作って具体的な記載項目を検討した。
記載する項目で関連が少ないのはどれか。
  1. 母親学級で救命処置を普及する。
  2. 中学校で応急処置講習会を開催する。
  3. 救急救命士の再教育体制を検討する。
  4. 保健センターに自動体外式除細動器(AED)を設置する。
3
次の文を読み〔問題25〕、〔問題26〕に答えよ。
 ある小学校の6年1組の担任教諭が喀痰塗抹菌検査陽性の結核患者であることが判明した。図は2か月後に、6年1組とその教諭と接触のなかった6年2組の児童に行ったツベルクリン反応の結果である。1組児童は平均値は24.2mm、2組児童の平均値は25.9mmであった。両組ともBCG未接種の児童はいなかった。
状況設定問題の画像
問 25
解釈で正しいのはどれか。
  1. 1組に集団感染が起きた。
  2. 2組に集団感染が起きた。
  3. 1組と2組とも集団感染が起きた。
  4. 1組と2組とも集団感染は起きなかった。
4
問 26
保健師は養護教諭と相談して今後の対応を考えた。
適切なのはどれか。
  1. 6年生児童全員の胸部エックス線写真を撮影する。
  2. ツベルクリン反応10mm未満の児童にBCGの追加接種を勧奨する。
  3. 教職員の定期健康診断受診率を確認する。
  4. 6年生児童の保護者への説明会を開催する。
1. a、b2. a、d3. b、c4. c、d
4
次の文を読み〔問題27〕、〔問題28〕、〔問題29〕、〔問題30〕に答えよ。
 人口2万人のA町。保健師は、脳血管疾患が多いのではないかという感触を持っている。
問 27
周辺自治体と比較する場合に適切な統計はどれか。
  1. 国民生活基礎調査
  2. 患者調査
  3. 人口動態統計調査
  4. 医療施設調査
3
問 28
この町の住民で、この5年間に県立病院で新たに脳血管疾患と診断された患者100人と県立病院の人間ドックを受診して異常がなかった者200人との過去の生活習慣を調べた。
調査方法はどれか。
  1. 生態学的調査
  2. 症例対照調査
  3. コホート調査
  4. 横断的調査
2
問 29
血圧管理が不十分だった者は患者群100人のうち30人であり、人間ドック群200人のうち25人であった。
血圧管理が不十分であることが脳血管疾患の発症に及ぼす影響のオッズ比はどれか。
  1. 0.18
  2. 0.30
  3. 2.4
  4. 3.0
4
問 30
この調査の解釈で最も注意しなければならないのはどれか。
  1. 町の人口規模が小さい。
  2. 人間ドック受診者は健康志向が強い。
  3. 治療を中断する患者がいる。
  4. 調査対象者の喫煙率の情報がない。
2