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第90回助産師国家試験

午後問題
次の文を読み〔問題1〕、〔問題2〕、〔問題3〕に答えよ。
 Aさん、31歳の初妊婦。身長160cm。妊娠24週の健康診査で体重66kg、初めて尿糖(+)となった。妊娠前に尿糖陽性を指摘されたことはない。
問 1
妊娠28週の健康診査時には尿糖(2+)となった。食後2時間の血糖値は130mg/dLであった。
今後の妊娠管理方針を決定するために、最初に実施すべき検査はどれか。
  1. 尿糖定量
  2. 75g糖負荷試験
  3. ヘモグロビンA1c測定
  4. フルクトサミン測定
2
問 2
Aさんは妊娠30週に検査および管理を目的として入院した。血糖日内変動を検査したところ、毎食後2時間値が130mg/dLを超えており、まず食事療法を開始する方針となった。
初めに設定する1日摂取総エネルギー量で適切なのはどれか。
  1. 1,400kcal
  2. 1,500kcal
  3. 1,600kcal
  4. 1,700kcal
4
問 3
その後、食事療法のみでは血糖コントロールができず、インスリン療法も併用した。尿糖(+)が続いたが、食後2時間の血糖値は120mg/dL未満であり、体重3,150gの男児を経膣分娩した。
産褥5日に退院する際の指導として適切なのはどれか。
  1. 「食事は妊娠中のエネルギー量を維持してください」
  2. 「インスリンを使用しているので母乳哺育は中止しましょう」
  3. 「1か月健康診査以後も定期的に尿糖、血糖の検査が必要です」
  4. 「6か月後に尿糖、血糖に異常がなければ、糖尿病の心配はありません」
3
次の文を読み〔問題4〕、〔問題5〕、〔問題6〕に答えよ。
 37歳の1回経産婦。前回は31歳で2,950gの女児を正常分娩した。今回、妊娠31週から骨盤位であった。できるだけ経膣分娩したいという希望があり、38週から管理入院し、38週4日に陣痛発来した。骨盤エックス線撮影では産科学的真結合線は10.8cm、超音波検査では児頭大横径は9.2cmである。
問 4
検査結果の評価で正しいのはどれか。
  1. 狭骨盤かつ児頭骨盤不均衡
  2. 比較的狭骨盤かつ児頭骨盤不均衡
  3. 比較的狭骨盤
  4. 正常骨盤
4
問 5
破水後、内診したところ子宮口6cm開大し、胎児の右踵が膣口より脱出し右膝が子宮口から外に膣内に触れた。さらに臍帯が胎児右膝の1cm下まで下垂し拍動していたが、膣口から外には出ていなかった。
アセスメントで正しいのはどれか。
  1. 不全足位
  2. 臍帯下垂
  3. 不全膝位
  4. 臍帯脱出
1. a、b2. a、d3. b、c4. c、d
2
問 6
この時の胎児心拍は正常であった。
対応で適切なのはどれか。
  1. 脱出している足を子宮内に還納する。
  2. 砕石位をとらせて骨盤位牽出術の準備を行う。
  3. パイパー鉗子を準備する。
  4. 直ちに帝王切開術の準備を行う。
4
次の文を読み〔問題7〕、〔問題8〕、〔問題9〕に答えよ。
 32歳の初産婦、専業主婦。夫は営業マン。核家族。妊娠38週0日で2,650gの児を出産した。扁平、小乳頭のため昼間は直接授乳をし、夜間は搾母乳を与えていた。産褥6日に母子ともに退院した。退院時の児の体重は2,520gであった。
 産後2週に家庭訪問した。「搾乳に30分以上かかり疲れる。夫は帰りが遅く、沐浴もなかなかしてくれず、育児や家事に協力的でない」と言う。助産師の訪問中、夫は営業の合間に購入したお米を届け、家の中を整理して仕事に戻って行った。
問 7
訪問時、児は入眠中であったが、母親は「そろそろ起きるころです」と言う。
最初に行うのはどれか。
  1. 児のアセスメント
  2. 褥婦のアセスメント
  3. 夫婦関係のアセスメント
  4. 地域環境のアセスメント
1
問 8
訪問時の児体重は2,780g。1日10回の授乳、排尿は7回、排便は3回。児が目覚めたので授乳を開始した。乳房の緊満は軽度で、催乳感がある。乳房には搾乳後の擦過傷がある。5分くらい吸啜して入眠してしまうため、1日2、3回搾母乳を足していると言う。
母乳育児指導で適切なのはどれか。
  1. 人工乳を補充する。
  2. 毎回搾母乳で補う。
  3. 夜間は搾母乳で補う。
  4. 直接母乳だけにする。
4
問 9
夫の協力に関して最初に行う対応で適切なのはどれか。
  1. 夫に協力を依頼する。
  2. 夫に育児休暇を取得するように勧める。
  3. 褥婦と助産師で夫がしている支援を確認する。
  4. 夫婦で家事分担について再検討するように勧める。
3
次の文を読み〔問題10〕、〔問題11〕、〔問題12〕に答えよ。
 37歳の初妊婦。服飾関係の仕事をしている。身長156cm、体重60kg(非妊時54kg)。妊娠26週、子宮底24cm、腹囲93cm。血圧136/80mmHg。尿蛋白(-)、尿糖(-)。浮腫はない。Hb11.4g/dL、Ht34.0%。推定児体重860g。「肩こりや疲労感はあるけれどしょうがない」と言う。
問 10
健康状態のアセスメントで正しいのはどれか。
  1. 貧血がみられる。
  2. 血圧が高めである。
  3. マイナートラブルはない。
  4. 児の推定体重は週数に比べて軽い。
2
問 11
妊娠30週。妊婦健康診査の結果は正常範囲であった。「今は仕事が忙しい。足がだるい感じが気になる。忙しくて食事を作る気にならない」と言う。
保健指導で適切なのはどれか。
  1. 自宅での安静を勧める。
  2. マタニティビクスの開始を勧める。
  3. 調理済み食品を利用した食生活の工夫について話し合う。
  4. 母性健康管理指導事項連絡カードを発行してもらうよう勧める。
3
問 12
妊娠32週。子宮底27cm、腹囲94cm。血圧138/78mmHg。尿蛋白(±)、尿糖(-)。浮腫(±)。Hb11.0g/dL、Ht36.0%であった。推定児体重1,200g。「仕事は楽しいが、相変わらずゆっくり休めませんね」と言う。
最も注意すべき所見はどれか。
  1. 血圧
  2. 浮腫
  3. ヘモグロビン
  4. 推定児体重
4
次の文を読み〔問題13〕、〔問題14〕、〔問題15〕に答えよ。
 27歳の経産婦。妊娠35週0日。身長162cm、体重60kg。現在、経過は問題なく、経膣分娩を強く希望している。前回は骨盤位のため妊娠37週2日に腹式深部帝王切開術で分娩した。
問 13
妊婦への説明で正しいのはどれか。
  1. 「無痛分娩をお勧めします」
  2. 「子宮破裂の発症率は10%です」
  3. 「周期的な子宮収縮が始まったら早めに入院しましょう」
  4. 「自然陣痛を待つよりも分娩誘発を行う方が安全です」
3
問 14
インフォームド・コンセントを行った上で経膣分娩を試みることになった。翌日、破水したため入院した。白血球は9,800/µL。分娩監視装置でモニターしたところ、10~15分に1回の子宮収縮がみられた。
アセスメント項目で優先度が高いのはどれか。
  1. 体温
  2. 下腹部痛
  3. 血小板数
  4. ヘマトクリット値
2
問 15
その後順調に陣痛が増強し、2時間後には発作30秒で3分間欠であった。その3時間後の内診所見は子宮口全開大、展退度100%、Station-1。さらに2時間後に内診したが所見は変わらない。陣痛の強さも変わらない。胎児心拍は異常なく、子宮内感染の徴候もみられない。
方針で最も適切なのはどれか。
  1. 経過観察
  2. 陣痛促進
  3. 鉗子分娩
  4. 帝王切開術
4
次の文を読み〔問題16〕、〔問題17〕、〔問題18〕に答えよ。
 31歳の経産婦。妊娠38週5日。前回39週3日で3,010gの女児を経膣分娩した。昨日午後8時頃から陣痛発来し入院した。身長156cm、体重62kg。推定児体重3,100g、未破水。午前4時頃陣痛が遠のいたが、昨晩はあまり眠れなかったと言う。午前6時現在、子宮口3cm開大、展退度40%、Station-3、恥骨結合2/3触知、矢状縫合横径、児頭は軽度固定。胎児心拍陣痛図を示す。
状況設定問題の画像
問 16
産婦の状態はどれか。
  1. 児頭骨盤不均衡の疑い
  2. 回旋異常
  3. 微弱陣痛
  4. 正常経過の潜伏期
4
問 17
産婦への対応で適切なのはどれか。
  1. 休息を促す。
  2. 階段の昇降運動を促す。
  3. 朝食は禁食にする。
  4. 分娩監視装置で連続モニタリングする。
1
問 18
午前11時55分、陣痛周期3分、発作50秒程度で陣痛が痛くなった感じがするという訴えがあり内診した。子宮口開大6cm、展退度60%、Station+1、小泉門が2時であった。経産婦の頸管開大曲線を図に示す。
娩出予測時刻で正しいのはどれか。
問18の画像
  1. 午後1時頃
  2. 午後2時頃
  3. 午後3時頃
  4. 午後4時頃
2
次の文を読み〔問題19〕、〔問題20〕、〔問題21〕に答えよ。
 妊娠32週の1回経産婦。血液型はO型Rh(D)陽性、間接クームス試験は陽性。B型肝炎ウイルスs抗原陽性、e抗原陽性、e抗体陰性。肝機能は正常。胎児発育は良好である。
問 19
妊婦に行うべき管理はどれか。
  1. 直接クームス試験
  2. 定期的な胎児超音波検査
  3. 抗Rh(D)免疫グロブリンの投与
  4. 抗B型肝炎ウイルス免疫グロブリンの投与
2
問 20
妊娠37週で2,800gの新生児を経膣分娩した。
母乳の開始時期で適切なのはどれか。
  1. 母体への抗B型肝炎ウイルス免疫グロブリン投与後
  2. 母体へのB型肝炎ウイルスワクチン接種後
  3. 児への抗B型肝炎ウイルス免疫グロブリン投与後
  4. 児へのB型肝炎ウイルスワクチン接種後
3
問 21
生後1日で総ビリルビン値が15mg/dLになった。児の血液型はA型Rh(D)陽性で、光線療法を4日間施行した。児の状態が改善し、生後10日で退院した。
両親への説明で最も適切なのはどれか。
  1. Rh(D)型不適合による溶血性黄疸が疑われる。
  2. ABO型不適合による溶血性黄疸が疑われる。
  3. B型肝炎による黄疸である。
  4. 母体から移行したビリルビンによる黄疸である。
2
次の文を読み〔問題22〕、〔問題23〕、〔問題24〕に答えよ。
 36歳の初産婦。妊娠38週3日。午前5時に2,800gの男児を経膣分娩した。アプガースコアは1分後9点。癒着胎盤で胎盤用手剥離術を施行した。分娩所要時間は31時間30分。分娩第3期までの出血量は446mLであったため、超音波断層法および膣鏡診を行ったが特別な所見はない。午前7時、子宮底は臍下2横指、子宮収縮は良好で分娩後2時間の出血量は60mL。体温37.3℃。脈拍80/分、血圧110/60mmHg。助産師は経過観察でよいと判断し、褥室に帰室させた。
問 22
午前8時、朝食中に「何か塊が出ました」とナースコールがあり訪室した。産褥パットに拇指頭大の凝血塊があり、子宮底は臍下1横指、子宮底の輪状マッサージで流血がみられた。
この時点で考えられるのはどれか。
  1. 胎盤遺残
  2. 頸管裂傷
  3. 膣壁裂傷
  4. 子宮収縮の不良
4
問 23
産褥1日。「お小水をしたい感じがわからない。トイレに行ってもなかなか出ない」と訴えている。
指導で適切なのはどれか。
  1. 1日の水分摂取は1,000mL以下にする。
  2. 温水をかけながら排尿する。
  3. 6時間毎にトイレに行く。
  4. 腹筋運動をする。
2
問 24
産褥3日から排尿はスムーズになっている。産褥5日に退院診察が行われた。
最も注意すべき所見はどれか。
  1. 子宮底臍下2横指
  2. 赤褐色悪露
  3. Hb10.8g/dL
  4. 子宮口1指開大
1
次の文を読み〔問題25〕、〔問題26〕、〔問題27〕に答えよ。
 19歳の経産婦、専業主婦。夫は37歳の会社員。身長150cm、非妊時体重52kg。2年前に第1子をトイレで墜落分娩し、生後20日に沐浴時に熱傷させたため、第1子は虐待の疑いで乳児院に保護入所となった。現在も入所中である。
問 25
妊娠30週。体重60kg。子宮底27cm、腹囲86cm。血圧120/70mmHg。尿蛋白(-)、尿糖(-)。推定児体重1,200g。「家でゴロゴロとしていることが多い。食事を作りたくないのでお菓子が多いかな。赤ちゃんも太っちゃうか心配です」と言う。
妊婦への指導で最も適切なのはどれか。
  1. 児の発育は問題ないことを説明する。
  2. お菓子を食べることを禁止する。
  3. 1日の過ごし方を一緒に計画する。
  4. 毎日2時間早朝に運動することを勧める。
3
問 26
妊婦は「1人目はお産も赤ちゃんの世話も全くわからなかったが、今度は勝手がわかっているので大丈夫です」と言う。そこで、助産師はまず妊婦から前回の分娩の様子を聞き、今回の分娩に向けた入院時期や方法について具体的に確認した。
今後の育児に向けた援助で優先度の高いのはどれか。
  1. 育児の支援者を探すよう勧める。
  2. 今度産まれる子は1人で育てられると励ます。
  3. 分娩後落ち着いたら第1子を引きとるよう勧める。
  4. 分娩後は入院期間を延長し育児指導を受けるよう勧める。
1
問 27
夫は毎週土曜日に第1子の面会に行っているが、「子育ては妻の育児能力では無理だと思う。おなかの子も育てるのは妻次第ですが、無理そうなら預かってもらいたい。私も仕事がありますし」と言う。
夫の相談先で適切なのはどれか。
  1. 児童相談所
  2. 児童養護施設
  3. 社会福祉協議会
  4. 母子生活支援施設
1
次の文を読み〔問題28〕、〔問題29〕、〔問題30〕に答えよ。
 産科病棟でリスクマネジメント委員を交えて事例検討を行った。
 事例:28歳の初産婦。妊娠経過順調。40週0日に陣痛発来で入院した。入院時の胎児心拍陣痛図所見は異常なし。子宮口が全開大し分娩室に入室した。分娩監視装置を連続装着後、まもなく胎児心拍数が144bpmから80bpmに低下し50秒続いた。直接介助担当のA助産師が酸素を投与し胎児心拍数が回復した。1時間後、胎児心拍数は100bpm程度に3回低下したが、A助産師は分娩準備を急いでいたため、胎児心拍陣痛図を見ることなく心音だけ聴いていた。胎児心拍数は40秒程度で回復し、A助産師が1人で人工破膜を行い、排臨、発露となった。医師と間接介助のB助産師は隣室で吸引分娩を行っていたため、A助産師は1人で分娩介助をした。1分後のアプガースコアは4点であったため、小児科医に連絡した。小児科医の蘇生で5分後のアプガースコアは9点であった。
問 28
この事例で、産科医に連絡する時期で適切なのはどれか。
  1. 胎児心拍数が80bpmに低下した時点
  2. 徐脈が3回出現した時点
  3. 人工破膜を行った時点
  4. 排臨した時点
1
問 29
この分娩経過におけるA助産師の対応で適切なのはどれか。
  1. 胎児心拍数を心音だけで聴いていた。
  2. 母体への酸素投与をした。
  3. 1人で人工破膜を行った。
  4. 1人で分娩介助を行った。
2
問 30
改善策について話し合った。
最も優先されるのはどれか。
  1. A助産師の責任を明確にする。
  2. 分娩介助技術の研修プログラムを見直す。
  3. 分娩が重なったときの業務手順を明文化する。
  4. 医師と助産師とのコミュニケーションを改善する。
3