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第96回看護師国家試験

午後問題
次の文を読み〔問題31〕、〔問題32〕、〔問題33〕に答えよ。
 Aさん、70歳の女性。72歳の夫と2人暮らしである。脳梗塞の既往と神経痛のため上肢の動きに制限がある。伝い歩きが可能である。数日微熱が続き、肺炎と診断されたため入院したが抗菌薬の治療で軽快し退院した。食事は夫の介助で摂取し、時々むせがみられる。排泄も夫の介助でトイレで行っている。
問 31
訪問看護師の初回訪問時のアセスメントで最も優先されるのはどれか。
  1. 顔色
  2. 見当識
  3. 呼吸音
  4. 排便回数
3
問 32
夫はAさんの好きな食品を遠くまで行って買い求め、食事ごとに用意している。食事時は、Aさんが「起き上がるのが面倒くさい」と言うため、仰臥位のまま介助している。
夫への食事介助の指導で最も適切なのはどれか。
  1. Aさんの好む姿勢にする。
  2. 食事時はAさんを坐位にする。
  3. 嚥下する時は下顎を挙上させる。
  4. 介助時はAさんの顔を横に向ける。
2
問 33
夫は「妻には世話になったし恩返しのつもりです」と、家事と介護の手を休めない。近県に住む娘の手伝いや訪問看護師のヘルパー導入の提案をかたくなに断り続けている。話をしていても居眠りをすることがある。
夫に最も気づきを促す必要があるのはどれか。
  1. 社会的孤立
  2. 介護量の不足
  3. 家族内の不和
  4. 夫自身の疲労
4
次の文を読み〔問題34〕、〔問題35〕、〔問題36〕に答えよ。
 Aさん、55歳の女性。身長155cm、体重40kg。57歳の夫(会社員)と75歳の実母との3人暮らし。3年前に筋萎縮性側索硬化症と診断された。半年前より言語が不明瞭である。嚥下が徐々に困難になり半固形物を摂取、体重も減少している。寝返りはできない。尿意はあり、排泄は床上で便器を用いて行っている。日中の介護は実母、夜間は夫が行っている。
問 34
Aさんは「最近話すのに時間がかかるようになり、実母は私の言うことをあまり聞いてくれない。私も話していると息が苦しくなる」と訪問看護師にとぎれとぎれに訴えた。
Aさんと実母とのコミュニケーションを促すために最も適切なのはどれか。
  1. 実母の手話の習得
  2. 実母の補聴器の使用
  3. Aさんの拡声器の使用
  4. 単語カードの補助的活用
4
問 35
3か月後、Aさんは呼吸が苦しいと訴えるようになった。以前に医師から人工呼吸器使用について説明を受けており、Aさんはその使用を希望している。
Aさんの人工呼吸器適応が検討される理由はどれか。
  1. 肺換気量の低下
  2. 経口摂取量の低下
  3. 意識レベルの低下
  4. 日常生活動作(ADL)の低下
1
問 36
実母は「年寄りに世話されるAも大変だろうけど、介護している私も大変。以前のように、友人とおしゃべりできるとうれしいけど」と独り言のように話す。
実母が必要としている社会資源はどれか。
  1. 介護機器
  2. 介護ヘルパー
  3. 配食サービス
  4. 緊急通報ブザー
2
次の文を読み〔問題37〕、〔問題38〕、〔問題39〕に答えよ。
 Aさん、46歳の男性。脳腫瘍で放射線治療を受け退院した。医師から本人と妻に余命半年であることが告げられた。Aさんは自宅で静かに最期を迎えたいと希望している。軽度の右片麻痺があり、トイレ歩行時は妻が介助している。日中はソファーに腰掛けて過ごすことが多い。訪問診療と訪問看護を利用している。
問 37
Aさんは最近「庭の植木を見ていると気持ちが落ち着く。無理してでも少し庭に出てみたいな」と繰り返し話す。妻は「転ぶと大変だから、なるべく家の中にいましょう」と、Aさんと訪問看護師に話す。
訪問看護師の対応で最も適切なのはどれか。
  1. 「庭に出るには主治医の許可が必要です」
  2. 「庭に出るときは訪問看護師が付き添います」
  3. 「転倒予防教室で訓練した後に考えましょう」
  4. 「体力を消耗しますから外に出ないほうがいいですね」
2
問 38
Aさんは日中傾眠していることが多くなってきた。妻は「最期はどうなるのかしら。苦しむのでしょうか。今のうちにもう一度入院したほうがいいんじゃないかしら」と訪問看護師に相談した。
対応で最も適切なのはどれか。
  1. Aさんに入院を勧める
  2. 親類と話し合うことを勧める
  3. 医師に最終決定してもらうことを提案する。
  4. Aさんの予測される状態と対処方法を説明する。
4
問 39
Aさんの意識が低下し下顎呼吸が始まった。医師から死が近いことを知らされた妻は、訪問看護師に「夫はこのまま死んでしまうのですね。私はもっと何かできたのではないかしら」と訴え涙を流している。
妻にかける言葉で適切なのはどれか。
  1. 「泣いたらAさんが心配しますよ」
  2. 「今のうちにAさんに謝りましょう」
  3. 「そんなことは考えないほうがいいですよ」
  4. 「そういう気持ちになるのもよくわかります」
4
次の文を読み〔問題40〕、〔問題41〕、〔問題42〕に答えよ。
 40歳の男性。会社員。3年前の定期健康診査で徐脈を指摘されていた。3か月前から時折、めまいを感じることがあったが放置していた。本日、会社から帰宅途中に意識消失発作があり、アダムス・ストークス症候群の疑いで入院した。脈拍数32/分、血圧120/80mmHg。意識は清明。めまいを訴えている。
問 40
診断のために行われる検査で適切なのはどれか。
  1. 12誘導心電図検査
  2. 磁気共鳴画像検査
  3. 心臓カテーテル検査
  4. 胸部エックス線撮影
1
問 41
入院時、イソプロテレノール(β遮断薬)が投与された。
患者に説明する内容で最も適切なのはどれか。
  1. 「熱が上がることがあります」
  2. 「ドキドキするようなら教えてください」
  3. 「排尿しづらくなったら教えてください」
  4. 「物が二重に見えるので気をつけてください」
2
問 42
その後、ペースメーカー植え込み術が行われた。退院後は職場復帰を希望している。
生活指導で適切なのはどれか。
  1. 「車の運転は控えましょう」
  2. 「毎日脈拍を測定しましょう」
  3. 「電池交換の必要はありません」
  4. 「入浴時は植え込み部位がつからないようにしてください」
2
次の文を読み〔問題43〕、〔問題44〕、〔問題45〕に答えよ。
 58歳の男性。2年前に2型糖尿病と診断されたが、週末にスポーツジムに通う以外は生活習慣を変えていなかった。数日前より歯肉の腫れのため疼痛があった。飲酒した翌朝、妻が声をかけても反応しないため、救急車で搬送された。体温37.8℃。呼吸数20/分、脈拍数88/分。血圧138/84mmHg。対光反射(+)、瞳孔不同(-)、意識レベルはⅢ-100。白血球10,000/µL。血糖986mg/dL、アンモニア56µg/dL。CRP13.2mg/dL。動脈血pH7.38。血漿浸透圧378mOsm/L。尿ケトン体(±)。
問 43
最も考えられるのはどれか。
  1. 肝性昏睡
  2. 敗血症性ショック
  3. ケトアシドーシス
  4. 高浸透圧性非ケトン性昏睡
4
問 44
ICUに入室4日後に意識が回復し、歩行も可能となり、一般病室に移った。1日1回(朝食前)使用のインスリン療法が導入され、退院に向けてインスリン自己皮下注射、自己血糖測定、食事療法および運動療法(30分歩行)が指示された。
運動療法の指導で適切なのはどれか。
  1. 「歩行運動は食後に行うのが効果的です」
  2. 「脈拍数が150/分を超えるように運動してください」
  3. 「朝の血糖値が300mg/dL以上の時は運動量を増やしましょう」
  4. 「毎日行えない場合は週末にスポーツジムでまとめて行ってください」
1
問 45
退院後の外来受診時に「この頃風邪をひきやすい。風邪の時にはどうしたらよいのでしょうか」と看護師に相談があった。
対応で適切なのはどれか。
  1. 「体重が減らなければ心配ないです」
  2. 「インスリン注射を中止してください」
  3. 「カロリーの高いものを積極的に食べましょう」
  4. 「自己血糖測定の回数を増やして低血糖に注意してください」
4
次の文を読み〔問題46〕、〔問題47〕、〔問題48〕に答えよ。
 23歳の女性。38.0℃の熱が1週間続いたため来院した。検査の結果、急性骨髄性白血病と診断され、化学療法後に骨髄移植を受けることになった。提供者は3歳上の姉であるが、家庭の事情で幼い頃より別々に育てられほとんど交流がない。患者は、他人同然に育った姉に骨髄を提供してもらうことを申し訳ないと気にしている。
問 46
対応で適切なのはどれか。
  1. 姉が面会に来ても会わないほうがよいと言う。
  2. 他の提供者が見つかるまで待つ方法を提案する。
  3. 自分の思いを姉に素直に話してみてはどうかと提案する。
  4. 提供者が姉であったのは偶然で気を遣う必要はないと説明する。
3
問 47
骨髄移植後18日、無菌室に在室している。中心静脈栄養法(IVH)試行中で、顆粒球100/µLである。「食べると吐くので何も食べたくない」と横になっていることが多い。
対応で適切なのはどれか。
  1. 水分を制限する。
  2. 経管栄養法とする。
  3. ソフトクリームを勧める。
  4. 無理して食べなくてよいと話す。
4
問 48
その後、退院が可能となった。慢性GVHD(移植片対宿主病)による皮膚障害のために免疫抑制薬の内服を継続している。
退院時の指導として適切なのはどれか。
  1. 「皮膚を潤すには温泉浴が適しています」
  2. 「直射日光を浴びないように気をつけてください」
  3. 「古い皮膚はボディブラシでこすり落としましょう」
  4. 「皮膚症状がなくなれば免疫抑制薬は中止してください」
2
次の文を読み〔問題49〕、〔問題50〕、〔問題51〕に答えよ。
 48歳の男性。職場での会議中にこれまで経験したことのない頭痛におそわれ、頭を抱えるように椅子に座り込んだ。さらに、強烈な吐き気により嘔吐した。
病院に到着後、CT検査が行われた。
問 49
来院時の症状・徴候として出現する可能性があるのはどれか。
  1. 耳出血
  2. 項部硬直
  3. 眼底出血
  4. 髄液鼻漏
2
問 50
検査後、緊急手術が予定され術前準備が開始された。妻が「だいぶ吐いたようですし、夫はきれい好きなので入浴はできませんか」と看護師に尋ねた。
清潔援助の方法で適切なのはどれか。
  1. ベッド上に臥床した全身清拭
  2. ベッドに腰掛けての全身清拭
  3. 椅子を使用したシャワー浴
  4. ストレッチャーを使用したリフトバス
1
問 51
中大脳動脈に動脈瘤がありクリッピング手術が行われたが、患部が深く手術時間が長引いた。術後意識は回復したが、錯語が多くコミュニケーションが成立しなくなった。
この男性の失語症はどれか。
  1. 全失語
  2. 名称失語(健忘失語)
  3. ブローカ(Broca)失語
  4. ウェルニッケ(Wernicke)失語
4
次の文を読み〔問題52〕、〔問題53〕、〔問題54〕に答えよ。
 Aさん、62歳の男性。印刷工場で長年働いている。最近、肉眼的血尿が出現し泌尿器科を受診した。診察の結果、入院し精密検査を受けることになった。
問 52
硬膜外麻酔下で膀胱鏡による膀胱組織の生検が予定された。
最も確認する必要があるのはどれか。
  1. 検査前の絶飲食
  2. 検査中の下肢のしびれ
  3. 検査直後の眠気
  4. 検査後の血尿の増強
4
問 53
膀胱癌と診断され、膀胱全摘術と回腸導管造設による尿路変更術が行われることになった。
術後の生活に関する説明で適切なのはどれか。
  1. 「尿意は残ります」
  2. 「尿の出口が二つになります」
  3. 「自己導尿が必要となります」
  4. 「パウチの装着が必要となります」
4
問 54
退院2週後の朝、Aさんから「昨夜から39.5℃の熱が続き、だるくて腰も痛い。食欲もないし、水も飲む気にならない」と泌尿器科外来に電話があった。
確認する情報で優先度が最も高いのはどれか。
  1. 咽頭痛の有無
  2. 排ガスの有無
  3. 排尿の量と性状
  4. 脈拍数とリズム
3
次の文を読み〔問題55〕、〔問題56〕、〔問題57〕に答えよ。
 Aさん、78歳の女性。3年前、夫が他界した後アルツハイマー病を発症し、同居家族だけでは介護が困難となり、介護老人保健施設に入所してきた。自分の部屋が分からず廊下を歩いている。食事は配膳しても箸を取らずに眺めている。午前中に家族に伴われ入所してきたことも覚えていない。職員がお茶を勧めると表情はこわばり緊張しているが「ありがとう。あなたもいかが」と話している。
問 55
この時点で最も維持されているのはどれか。
  1. 記憶
  2. 見当識
  3. 情緒・感情
  4. 食欲
3
問 56
入所後3日、自分の部屋が分からず廊下の徘徊は続いている。食事中でも無言で立ち上がり歩きだしてしまう。
Aさんへの対応で適切なのはどれか。
  1. 徘徊を制止する。
  2. そのまま様子をみる。
  3. 屋外での散歩を促す。
  4. 特定の看護師が食事に付き添う。
4
問 57
落ち着いて座っていられるようになり、作業療法にも参加できるようになった。しかし、折り紙を口に入れたり、のりをなめたりする異食行動がみられる。
最も適切な対応はどれか。
  1. 異食する理由を確認する。
  2. 参加時はマスクを着用させる。
  3. 異食しそうな時は、腕をつかんで制止する。
  4. 使い終わった物品は手の届かない所に片付ける。
4
次の文を読み〔問題58〕、〔問題59〕、〔問題60〕に答えよ。
 Aさん、85歳の女性。2か月前から食欲不振と4kgの体重減少があり来院した。胃癌と診断され手術目的で入院した。1人暮らしで日常生活は自立している。身長148cm、体重38kg。中心静脈カテーテルが挿入され、3日後に全身麻酔での手術が予定されている。
問 58
Aさんは「点滴の管が心配だから」とトイレ以外は臥床している。体温36.3℃、呼吸数20/分。夜間に時々咳嗽があるが喘鳴はない。
この時期に最も適切な援助はどれか。
  1. 呼吸訓練
  2. 床上排泄訓練
  3. 筋力強化運動
  4. 関節可動域訓練
1
問 59
Aさんは幽門側胃切除術を受けた。中心静脈カテーテルの他に経鼻胃管と膀胱留置カテーテルが挿入されている。術後1日、Aさんは抜いた膀胱留置カテーテルを手に持ってベッドサイドに立っていた。「息子が泣いているから家に帰る」と寝衣を着替えようとしている。
Aさんの状況はどれか。
  1. 心気症
  2. 感情失禁
  3. うつ状態
  4. 術後せん妄
4
問 60
順調に経過し、食事は5分粥6回食になった。Aさんは5日後に退院予定だが「病院にいる間はいいけど、これからは食事を作るのが大変そう」と話している。
退院時の食事指導で適切なのはどれか。
  1. 退院直後に1日3回食とする。
  2. 食事の献立例を一緒に考える。
  3. 繊維質の多い食品を摂取する。
  4. 食べる速さは気にしなくてよい。
2