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第97回看護師国家試験

午後問題
次の文を読み〔問題31〕、〔問題32〕、〔問題33〕に答えよ。
 74歳の男性。70歳の妻と2人暮らし。1か月前に脳梗塞を発症し入院した。右不全麻痺があるが病状が安定したため3日前に在宅療養となった。療養者は麻痺が受け入れられず、1人で食事を摂取する意欲が乏しく、退院後の食事はベッド上で坐位になり妻の介助で軟らかい物を経口摂取している。初回訪問時に妻から「食事に時間がかかって困ります」と訪問看護師に相談があった。食事の様子を観察すると、麻痺側の口腔内の食べ物は残りがちで、お茶はスプーンで摂取しているがむせることがある。
問 31
妻への食事介助の指導で適切なのはどれか。
  1. 食物は細かく刻む。
  2. 液体はとろみをつける。
  3. 香辛料を用いる。
  4. 一口量は多くする。
2
問 32
嚥下障害の悪化を予防するために嚥下訓練を勧めた。
妻への指導で最も適切なのはどれか。
  1. 食前にアイスマッサージをする。
  2. 食事時の体位は頸部を後屈する。
  3. 食後に肩の運動を促す。
  4. 食後に深呼吸を促す。
1
問 33
嚥下訓練を継続したことでむせることがなくなり、1人で食事を摂取することに意欲がみられ始めた。療養者は右利きであり「右手で自分で食べたい」と言う。妻も「少しでも自分で食事ができるようにしたい」と言う。
指導で適切なのはどれか。
  1. 従来使用していた箸を使う。
  2. スプーンの握りを太くする。
  3. 体の左側を枕などで固定する。
  4. オーバーベッドテーブルの高さは胸の位置にする。
2
次の文を読み〔問題34〕、〔問題35〕、〔問題36〕に答えよ。
 3歳の男児。脳性麻痺で四肢と体幹の著しい運動障害があり身体障害者障害程度1級の認定を受けている。姿勢保持および移動・移乗は全介助である。食事は母親が介助し経口摂取しているが、誤嚥性肺炎で入退院を繰り返している。今回は経鼻からの経管栄養法となり昨日退院した。父親は海外に単身赴任しており介護は母親に任されている。週1回の訪問看護サービスを利用している。
問 34
訪問看護師が実施する母親への経管栄養法の指導で適切なのはどれか。
  1. 粘稠度の低い栄養剤の選択
  2. 注入時の体位の保持
  3. 無菌的な注入操作
  4. 注入前の排便
2
問 35
肺炎予防のための最も適切なのはどれか。
  1. 含嗽の練習
  2. 腹部の熱布清拭
  3. 上肢の他動運動
  4. 歯のブラッシング
4
問 36
母親は「最近腰痛がひどくなり、歩くのがつらくなりました」と訪問看護師に相談した。
母親への援助で最も優先するのはどれか。
  1. 児の入所施設を探す。
  2. 父親の帰国を勧める。
  3. 訪問介護の導入を提案する。
  4. 児童相談所への相談を勧める。
3
次の文を読み〔問題37〕、〔問題38〕、〔問題39〕に答えよ。
 80歳の男性。身長165cm、体重58kg。要介護2で在宅療養中である。介護者は72歳の妻。療養者はベッド上坐位で食事を8割摂取している。お茶は好んでよく飲んでいる。排泄時は妻の介助でトイレまで歩行している。トイレ以外はほとんどベッドの頭側挙上45度でテレビを見て過ごしている。妻とのコミュニケーションは良好である。介護保険サービスは週1回の通所リハビリテーションを利用している。仙骨部に褥瘡ができ訪問看護が開始された。
問 37
仙骨部の褥瘡の要因として最も考えられるのはどれか。
  1. 摩擦とずれ
  2. 皮膚の湿潤
  3. 栄養の不足
  4. 知覚の低下
1
問 38
療養者に尿失禁がみられたため紙おむつを使用するようになった。排便時は自室の隣にあるトイレまで妻の介助でゆっくり歩行している。
褥瘡を悪化させないための家族への指導で最も優先するのはどれか。
  1. お茶を飲む量を控える。
  2. おむつカバーを使用する。
  3. シーツにバスタオルを敷く。
  4. おむつ交換時に清拭する。
4
問 39
2か月後、仙骨部の状態は軽快した。妻は1人で熱心に介護しており、訪問看護師に「またおしりが赤くならないか心配です。夜も気になって3度は起きているので昼間に眠くなります」と疲れた様子で話す。訪問看護師は妻の話を聞き介護をねぎらう言葉かけを行ったが、介護支援専門員(ケアマネジャー)と連携し調整する必要性を感じた。
調整内容で最も適切なのはどれか。
  1. 通所リハビリテーションの利用回数を増やす。
  2. 介護老人福祉施設への入所を勧める。
  3. 配食サービスを利用する。
  4. 妻に受診を勧める。
1
次の文を読み〔問題40〕、〔問題41〕、〔問題42〕に答えよ。
 55歳の男性。会社員。自家用車で通勤し、仕事ではパーソナルコンピュータを常時使用している。突然、左眼の視野欠損を生じ、眼科を受診した。診察の結果、左眼裂孔原性網膜剥離のため手術が必要であり、3日後に入院するよう説明された。
問 40
入院までの生活指導で適切なのはどれか。
  1. 車の運転は問題ない。
  2. 転倒しないよう階段はゆっくり昇降する。
  3. 仕事は通常どおり行ってよい。
  4. 右側は見えにくいので注意する。
2
問 41
予定どおり入院し、翌日に手術が行われた。手術後は患部の安静のため、うつむき体位がとられた。患者は「頸部に痛みがあり、どうしたらよいか」と苦痛を訴えた。
対応で最も適切なのはどれか。
  1. 鎮痛薬を使用する。
  2. 2時間ごとに体位を変換する。
  3. 頸部をネックカラーで固定する。
  4. 安楽枕で腰部と頸部の負担を軽減する。
4
問 42
手術後10日に軽快退院することになった。
退院前の説明で適切なのはどれか。
  1. 「再発の危険はありません」
  2. 「夜はうつぶせで休みましょう」
  3. 「日中はサングラスが必要です」
  4. 「眼帯を装着する必要はありません」
4
次の文を読み〔問題43〕、〔問題44〕、〔問題45〕に答えよ。
 45歳の女性。2か月前から咳嗽と喀痰とが出現した。最近、倦怠感も強くなったため受診した。胸部エックス線写真で左肺上葉に異常陰影を認め、精査と治療とを目的に入院した。
問 43
経気管支肺生検(TBLB)が予定された。
肺生検前の説明で適切なのはどれか。
  1. 「検査前日の夜9時以降は飲水できません」
  2. 「気管支鏡を入れるときには息を止めてください」
  3. 「苦しいときは手を挙げて合図してください」
  4. 「検査後には積極的に咳をして痰を出してください」
3
問 44
検査の結果、左肺上葉の腺癌と診断され、開胸左肺上葉切除術が予定された。術前肺機能検査結果は%肺活量70%、1秒率85%であった。
手術前の呼吸練習で適切なのはどれか。
  1. 短速呼吸
  2. 胸式呼吸
  3. 口すぼめ呼吸
  4. 間欠的陽圧呼吸(IPPB)
4
問 45
左肺上葉切除術後2日目、右肺下葉で呼吸音が聴取されない。体温37.4℃。呼吸は浅喪性で25/分、血圧164/96mmHg。鼻カニューレで3L/分の酸素吸入を行い、経皮的動脈血酸素飽和度86%。胸腔ドレーンは-10cmH2Oで低圧持続吸引している。痰がからんでいるため喀出を促したが「痛くてそれどころではない」と顔をしかめた。
対応で最も適切なのはどれか。
  1. 酸素投与量を増やす。
  2. 去痰薬の吸入を行う。
  3. 気管支鏡による気管内吸引の準備をする。
  4. 胸腔ドレーン吸引圧を上げる。
3
次の文を読み〔問題46〕、〔問題47〕、〔問題48〕に答えよ。
 63歳の男性。妻と2人暮らし。肝機能異常を指摘されていたが、自覚症状がなく積極的な治療を受けていなかった。最近、倦怠感があり受診したところ肝機能データが悪化しており、腹腔鏡検査と肝生検のため入院することになった。慢性心房細動のためにβ遮断薬、血栓予防のために低用量アスピリンを内服している。
問 46
腹腔鏡検査についての説明で正しいのはどれか。
  1. アスピリンの内服を中止する。
  2. 検査当日の朝は流動食を摂取する。
  3. 気管挿管し全身麻酔下で行う。
  4. 穿刺針から生理食塩水を注入して腹部を膨らませる。
1
問 47
精査の結果、肝硬変と食道静脈瘤が認められ、内視鏡的硬化塞栓療法が必要となった。医師から説明を受けた患者は「病気が悪くなっているようだ。これから必要な治療についてたくさん話されてもついていけない。何のためにこの治療が必要なのかもう一度教えてください」と看護師に尋ねた。
内視鏡的硬化塞栓療法の目的で正しいのはどれか。
  1. 腹水貯留の予防
  2. 食道狭窄部の拡張
  3. 食道静脈瘤の出血予防
  4. 肝硬変部への薬剤の注入
3
問 48
内視鏡的硬化塞栓療法が実施され帰室した。悪心と前胸部痛はなくバイタルサインは安定している。
帰室後24時間の対応で適切なのはどれか。
  1. 終了直後から粘膜保護薬を内服する。
  2. 安静度の制限はない。
  3. 経鼻胃管から処置部に抗菌薬を注入する。
  4. 翌朝から常食を開始する。
1
次の文を読み〔問題49〕、〔問題50〕、〔問題51〕に答えよ。
 34歳の男性。運送会社で配達を担当している。6か月前の職場の健康診断で、血圧142/90mmHg、尿蛋白(2+)、尿潜血(2+)を指摘されたが放置していた。1週前、風邪症状の後に紅茶色の尿がみられたため内科を受診した。血清IgAが高値のため精査が必要となり入院した。
問 49
経皮的腎生検を行うことになった。
説明で適切なのはどれか。
  1. 「左右交互に横向きになって両方の腎臓に針を刺します」
  2. 「針を刺すときは深呼吸を繰り返してください」
  3. 「検査2時間後に止血が確認できたら歩いてかまいません」
  4. 「検査後2週間は重い物を運ぶ仕事は控えてください」
4
問 50
検査の結果、IgA腎症と診断され昼間だけの勤務に変更した。塩分1日7g以下の食事制限と3か月ごとの定期受診が指示された。塩辛いものが好物で外食の多い患者は「塩気がなくて食べた気がしない」と減塩食に物足りなさを感じている。
対応で適切なのはどれか。
  1. 「酸味や香味を利用するとよいでしょう」
  2. 「各食事で均等に食塩を摂取しましょう」
  3. 「市販のレトルト食品は塩分が少ないので活用するとよいです」
  4. 「料理は人肌程度の温度にすると塩味をよく感じることができます」
1
問 51
仕事が忙しくなり、退院後は一度も受診をせずに2年が経過した。2か月前から疲れやすくなったが、仕事のせいだと思い放置していた。1週前から息切れ、食欲不振および浮腫が出現し、昨日から眠気と嘔気および嘔吐とがあり外来を受診した。体温36.5℃。脈拍数98/分。血圧238/112mmHg。血液検査で尿素窒素100mg/dL、クレアチニン12.0mg/dL、Hb7.1g/dL。胸部エックス線写真で心拡大と肺うっ血とが認められ入院した。
直ちに行われるのはどれか。
  1. 輸血
  2. 血液透析
  3. 利尿薬の内服
  4. 胸腔ドレナージ
2
次の文を読み〔問題52〕、〔問題53〕、〔問題54〕に答えよ。
 58歳の男性。会社役員。妻と子どもの3人暮らし。出勤途中の電車内で意識消失し、けいれん発作を起こして搬送された。検査の結果、脳腫瘍の疑いで入院した。
問 52
入院後頭痛と嘔吐があり、頭蓋内圧亢進症状が認められた。
起こりやすいのはどれか。
  1. 徐脈
  2. 体温低下
  3. 血圧低下
  4. 呼吸数増加
1
問 53
精査の結果、神経膠腫と診断された。腫瘍摘出術後、放射線療法が開始された。照射部位周辺の発赤がみられ「頭が痛痒い」と訴えている。
頭部の皮膚のケアで適切なのはどれか。
  1. 冷湿布剤を貼用する。
  2. ゆるま湯で洗い流す。
  3. アルコール清拭をする。
  4. ガーゼで保護してテープ固定する。
2
問 54
半年後、残存腫瘍の増大により意識レベルが低下し、うとうとしていることが多くなった。医師から妻に、余命2、3週と説明された。妻は毎日面会に来ている。看護師に「話しかけても答えないし、何もしてあげられないのがつらい」と涙ぐんで話した。
看護師の対応で最も適切なのはどれか。
  1. 「面会は毎日でなくてもいいですよ」
  2. 「そばにいてあげるだけでもいいんですよ」
  3. 「お世話はすべて看護師がさせていただきますよ」
  4. 「今の状態ではあまり声をかけないほうがいいですね」
2
次の文を読み〔問題55〕、〔問題56〕、〔問題57〕に答えよ。
 76歳の男性。1人暮らし。妻とは死別し1人娘は結婚して遠方に住んでいる。高血圧症と糖尿病の既往がある。3週前から全身倦怠感と咳嗽とが出現し、受診の結果、肺炎と診断されて2週前に入院した。抗菌薬の投与によって症状は改善したが、血糖値が安定しないため退院が延期となった。そのころから看護師に繰り返し何度も同じことを言ったり、会話中に突然怒り出したりする言動がみられた。
問 55
最近は入院していることがわからず院内をうろうろしたり、毎日カレンダーを見ているが月日や曜日がわからない。
この状況から最も考えられるのはどれか。
  1. 難聴
  2. 躁状態
  3. 構音障害
  4. 見当識障害
4
問 56
入院後、初めて入浴することになり、看護師がその旨を伝えると「やっと風呂に入れる。うれしい」と話していた。しかし、実際入る時になると「そんなのは聞いていない。自分にも都合があるので入らない」と拒否する。
この時の対応で適切なのはどれか。
  1. 入浴を中止する。
  2. 入浴準備を始める。
  3. 手を引いて浴室に誘導する。
  4. 時間をおいて再度声をかける。
4
問 57
空腹時血糖は130mg/dL前後で推移したため退院が可能となった。本人は自宅に帰りたいと話している。病棟での生活は看護師の見守りや促しによって1人で行えているが、食事制限が守れず売店で購入したお菓子を食べている。看護師が声をかけると「間食はしていない。誰か別な人と間違えている」と怒ってしまう。
退院に向けた初期の対応で最も優先されるのはどれか。
  1. 娘に連絡し同居を勧める。
  2. 本人への食事指導を計画する。
  3. 娘が行える支援の内容を確認する。
  4. ソーシャルワーカーに入所施設の紹介を依頼する。
3
次の文を読み〔問題58〕、〔問題59〕、〔問題60〕に答えよ。
 80歳の男性。78歳の妻と2人暮らし。共働きの長男夫婦が隣町に在住している。妻は軽度の認知症であるが日常生活は自立している。男性は1日30分程度の妻との散歩を日課にしている。商店街で買い物の途中、急いで帰宅しようとして急に胸が締め付けられるような痛みと冷汗とが出現し失神した。病院に搬送され急性心筋梗塞と診断された。
問 58
搬送時の意識は清明。緊急に経皮的冠状動脈形成術(PTCA)を受けることになり、駆けつけた長男とともに医師から治療の説明を受けた。
緊急手術に向けた援助で適切なのはどれか。
  1. 水分摂取を促す。
  2. トイレに誘導する。
  3. 手術への理解を確認する。
  4. シャワー浴を介助する。
3
問 59
手術後CCUに入室した。穿刺部の固定部位や点滴静脈内注射の輸液チューブを見ながら触っている。「ここはうるさいから家に帰る」と興奮し起きあがろうとしている。長男が面会に来ても誰なのか理解できない様子である。
対応で最も適切なのはどれか。
  1. 家族の面会を制限する。
  2. 医療機器のアラームを切る。
  3. 手を握りながらそばに寄り添う。
  4. カーテンを閉めて部屋を暗くする。
3
問 60
手術翌日、一般病棟へ転棟した。高血圧を指摘されたが経過は良好なため、手術後2週で退院が決定した。「病気の母さんが待っているから早く元気になりたい」病室内を歩いている。
退院指導で適切なのはどれか。
  1. 「水分を控えましょう」
  2. 「散歩する時はゆっくり歩きましょう」
  3. 「階段の上り下りの訓練をしましょう」
  4. 「血圧の薬は体調によって調整しましょう」
2